2009年12月08日

横書き書字についての論文(2)

この記事は
直前の

横書き書字についての論文(1)

の記事をさきによんでからながめてください。


小竹光夫「縦書き書字における平仮名の字形的損傷について」書写書道教育研究』第18号 pp.41-50 2004)


この論文の紹介です。

さて、いよいよ、横書き書字がどのようにひらがなに字形的損傷をおよぼすのか、の実証です。


当論文の著者、小竹氏はひらがなの成り立ちを問題にして、
筆画の「連係ストローク」に着目します。
「連係ストローク」とは、この論文によれば「下の文字(部分)に接続するために生じた」「/方向の線」(42p)のことです。

atate.gif

「あ」でいうと、赤線で囲ってある部分です。

「あ」はもとは漢字の「安」から来ていて、
最終筆は「一」なんです。そこから、次の字へ移るために、斜めの線があらわれます。
これが「連係ストローク」だそうです。

「連係ストローク」はもともと「「右手書字」・「縦書き」という文字文化の伝統」(42p)のもとで「文字間の連続によって生じた現象」(43p)であるが、それがひらがなの字体として固定していったものだそうです。

この「連係ストローク」は、本来は次の字に続けて書かない場合は出現しない線だったのですが、ひらがの字形において「実現形として文字の中に吸収され、定着した」ものだそうです。


そして、小竹氏はこのような仮説をたてます。

「縦書き書道の中で生成された平仮名に残存する『連係ストローク』の部分に、横書きした場合、最も大きな損傷が生じるのではないか」(44p)


そして、「連係ストローク」の損傷が生じる恐れがあるひらがなとして、以下のものをあげています。

(1)明確な連係ストロークを残すもの……あ・す・ち・め・ら・ろ・わ
(2)ハネの方向が転じたもの……う・の・り
(3)ハライの方向が転じたもの……け・つ

この12文字に損傷が出るらしいです。
あれ?
「お」は?

えーっと、「お」は損傷しないらしいです。

なぜ「あ」の
atate.gif
赤線部分は損傷するのに、
「お」は損傷しないのだろう。

などと、「あ」と「お」の区別ができなかった私なんぞは首をかしげてしまうのですが。
この論文中には書いてなかったので、書道できる人にきいてみたんです。

そうすると、「あ」と「お」の「/」は、違うものらしいです。

あのatate.gif
は小竹氏のいう「連係ストローク」なのですが、
「お」の似たようなatate.gifは、これはもともとの成り立ちが漢字の一部なので、書道界ではこの2つの「/」違う形なんだそうです。

へー。知りませんでした。
私はおなじものかと思ってました。「あ」と「お」は形似てるし。

楽しいムダ知識が増えましたね、ってところですが。

ここで、私はちょっと首をかしげてしまうんです。

そんなに、ひらがなの成り立ちって、重要ですかね。
筆の勢いである「連係ストローク」だろうが、文字の一部だろうが、いったんひらがなの字体として定まってしまえば、
その線のそもそもの成り立ちなんか、そんなに重要なことでしょうか。

「あ」は損傷して「お」は損傷しない、なんてこと、本当にあるんですかねえ?

「あ」と「お」のatate.gif赤線部分が違う字体だなんて、いったいどんだけの人が把握しているんでしょう。
少なくとも私はしりませんでしたよ。
そこまで、「そもそもの成り立ち」は字形に影響はしてないでしょう。

「連係ストローク」だから損傷する、という仮定はちょっと、頭を使いすぎじゃないかとおもう。

もっと素朴に、最終筆の右上から左下への斜め線「/」は、横書きにすると縦線「|」になるんじゃないか、でいいとおもうな。

縦書きだと次の文字に続ける関係で
atate.gif
こんなかんじになるけど、

横書きだと次の文字に続ける関係で
ayoko.gif
こんな感じになる。

このレベルの思いつきでいいとおもう。
「連係ストロークが」とか言っちゃうと、「あ」は損傷するとして、「お」をみすごしてしまうんだったら、「連係ストローク」という考え方はむしろ邪魔でしょう。

が、まあ。
とりあえず、最終筆の右上から左下への線「/」が変化する、っていう仮説でよいのだったら、それはそれでいいでしょう。
最終筆の「/」が多くは「連係ストロークに関係する」という指摘も、まあ、役に立たないムダ知識というレベルで、お勉強になりました。


で、この仮説を実証するために、実験がはいります。

ですが、記事が長くなったので、今日はここで。
あとですぐに更新します。
posted by なかのまき at 01:14| Comment(2) | TrackBack(0) | 書道教育
この記事へのコメント
連係ストローク…勉強になりました…^^;
「お」の字形がくずれないとされているのは、最後に点(「お」の右上)を打つから、ということなのでしょうか??
(右上の点から次の字にうつるのであれば、右上から左下にむけてのはらいで終わる字と比べると、あまり影響ない?)
そして、私は元の字母意識してひらがな書いてません…字形も損傷しまくっていると思います…笑
Posted by Y Selection at 2009年12月13日 15:46
Y Selectionさん

コメントありがとうございます。
えっと、論文中では、「お」はとりあげられてないんです。
なので、「お」に字形の“損傷”があるかどうかは、わかんないんです。
論文に書いてないので。

私は、「あ」に字形の変化(“損傷”)「お」に字形の変化がないのは、ちょっと考えにくいと思います。

横書きするなら、どっちにせよ→方向に手首の移動があるので。それは、縦書きにない動きなので。
すべての字に変化があるんじゃないか、と私は妄想してますが。

やっぱり、実験してみないとなんともいえないとおもいます。
連係ストロークだけに着目してしょうがない、ということが言いたかったです。
Posted by なかのまき at 2009年12月17日 22:13
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/34071779

この記事へのトラックバック