2010年01月23日

ペン習字はだいじょぶなのか。

ひとつおもったのですが、
私、いままで書道の人書道の人とひとくくりにしてきて、区別してなかったけど、
毛筆芸術書道とボールペン習字をいっしょにしてたのはまずいですね。

というのは、こんかい紹介するのは意味書道の人ではなく、むしろ言語学の人ですから。
というわけで。
↓ こういう本があるよ〜と教えていただきました。
『人生がガラリ変わる! 美しい文字を書く技術』(猪塚恵美子・2006)
人生がガラリ変わる!美しい文字を書く技術人生がガラリ変わる!美しい文字を書く技術

講談社 2006-01-21
売り上げランキング : 38493

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


よくある自分探し系の実用書ですね。
「これのなにが問題なの?」
というと。
まあ、「人生がガラリ変わる美しい字」なんてタイトルにまずツッコミたくてたまりませんが。
それはおいておいて。

この本の著者の猪塚恵美子氏なんですが、
表紙に「言語学博士 猪塚恵美子」ってかいてあるんです。

えっ……これはまずくないか? 言語学的に。

これは、下手をするとこの本には言語学の知見が含まれているというように読みとってしまうひとだっているでしょう。

手書きの文字の字形と、その文字の書き手の社会的属性との関係、というような研究っていうのなら、言語学でもじゅうぶんにありでしょう。

ただ、「人生がガラリ変わる美しい字」は言語学ではありませんね。
表紙にわざわざ「言語学博士」の肩書きをのせる必要ありますかね。
CiNii
で調べてみましたけど、文字の研究をしているようにもみえませんし。
もちろん、本を売るためには使えるものは使いましょう、っていうのはよくわかります。そのためには肩書きを表紙に載せることだって必要なのはわかります。

そのことの善悪を判断したいわけではなく、ただ単純に疑問なのですが。
ただ、本当に、その戦略は妥当なのか、というのが気になるんです。

たとえば、「猫の飼い方」
っていうタイトルの本の表紙に「言語学博士」っていう肩書きがついてたら、「はあ?」って思いませんかね。
「猫に言語学かんけいないし。え? てゆーか学歴ひけらかしたいだけとか?」
となって、かえって印象悪くなりませんかね。


「勉強ができる」という蔑称
こちらのブログの記事を読むとわかるように、
ガクモンができる、べんきょーができる、ってのは無条件に支持されたりはしないはず。
本の内容によっては、「言語学博士」という肩書きがマイナスに働いてしまう可能性だってけっこーあるでしょう。

出版社としては、「美しい字」には「言語学博士」の肩書きが有用であると判断しているのでしょうが。

これは一般的にはわりと妥当なのでしょうか。
「ああ、言語学の博士号もってるひとが美しい字の書き方をおしえてくれるなら、それはまちがいない」
と、サイフのひもをゆるめる効果があるのでしょうか。


……あるのかなあ。
とりあえず、字の美しさ(書道のできがよい)ということは国語科の成績に関係がある、というような考えはありそうです。


100122-235714.jpg

「先生は
 書道ができるけん
 国語だけは5だった
 タイプやろ?
 
 あとは3だけで」

これは、おしえてもらった書道マンガ、『ばらかもん』1巻(ヨシノサツキ・スクウェア・アニックス)より、書家の主人公に近所の女性が言ったセリフです。

書道できると国語5なのか。
ホントに〜?

まあ、でもそういうなんか、そういう空気はあるかもしれませんね。字がうまいひとなら国語もできる、みたいな。

で、国語科に関係あるなら、言語学にも関係あるっていうのも、
うーん。ないこともないか。
戦略としては、ありなのかな。

ただ、言語学の人という立場からはどうなんだろう。「美しい字が人生をかえる」なんて一歩間違えれば霊界の話ですがね。
「オカルト本に言語学を利用しないでくれ」
とか、そういうのはないんですかね。
わたしはちょっと言いたいです。


それと、もういっこ気になったのが、私はいっこうに考えてなかったのだけど、ペン習字にも一定の愛好者がいるんだな、ということ。

毛筆芸術書道には、毛筆という伝統と、芸術というりっぱなうしろだてがあります。
それにひきかえ、ペン習字にはなにもない。
毛筆書道より、よっぽどパソコンの影響を直接受けてしまうジャンルでしょう。

ペン習字の愛好家にとって、パソコンで書けるのに硬筆で書く意味は?
と聞かれたとき。「もうパソコンの時代ですね」とか言いにくいでしょう。じぶんの愛するものが。「いらない」とは。いえません。
さりとて、書道ほど伝統とか芸術なんていうよりかかれる存在意義がない。
となると、
「人生を変える」とか、
「モテ文字診断 スーパー筆跡診断で幸せになる!」とか、
モテ文字診断 (中経の文庫)モテ文字診断 (中経の文庫)

中経出版 2007-07
売り上げランキング : 357600

Amazonで詳しく見る
by G-Tools



そっち方向に流れてしまうと。
どうかな。
オカルトまであと一歩。

書道よりあぶないかんじが。しますが。

posted by なかのまき at 00:44| Comment(4) | TrackBack(0) | ニセ科学;筆跡学
この記事へのコメント
『字がうまくなる』(新潮新書)だと
「文学博士(言語学)」ってかいてありますね。
Posted by ましこ at 2010年03月30日 15:46
ほう。
「文学博士(言語学)」ってあたらしいですね。
みたことのない肩書きだ。
Posted by なかのまき at 2010年04月02日 20:44
博士 (文学)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

博士(文学)(はくし ぶんがく)は、博士の学位であり、人文科学(哲学、史学、文学を含む広義での文学)に関する専攻分野を修めることによって、1991年以降に日本で授与されるものである。
1991年以前の日本では、文学博士(ぶんがくはくし)という博士の学位が授与されていた。1991年以降では、文学博士で扱われていた領域は、「博士(文学)」以外に「博士 (哲学)」、「博士 (史学)」、「博士 (心理学)」、「博士 (言語学)」などに細分化されている。
英語圏においては、各国による学位制度に違いがあるものの、Doctor of Philosophy in Literature(Ph.D. in Literature)あるいはDoctor of Literatureが、博士 (文学)に相当する。……



■あと、博士(教育学)とか、ほかにも いくつかあるはずです。■ですので、「文学博士(言語学)」は、1991年以前なら ありということでしょうかね。
Posted by ましこ at 2010年04月03日 19:33
>「文学博士(言語学)」は、1991年以前なら ありということでしょうかね。

おお。これは私の無知でした。
文学博士=博士(文学)と思っていました。
ぜんぜんちがうんですね。

となると、やっぱり、このばあい。
肩書きに大切なのは「博士」ではなくて「言語学」なんですね。
「字がきれいだと人生がナントカ」っていうタイトルの本の肩書きはたんに「文学博士」じゃなくて「文学博士(言語学)」じゃないとダメなんだ。

あ、これはおもしろいです。

Posted by なかのまき at 2010年04月05日 22:35
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/34895191
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック