2010年02月10日

それは、私の問題ではなくあなたの課題だ(3)

はい。それでは石田(1987)について。
あ。
正式名称は
石田敏子『日本語教師養成通信講座 7「書き方の教育』(アルク・1987)です。

えっと、
川口義一・横溝紳一郎(2005)『成長する教師のための日本語ガイドブック』で紹介されていた文献ですね。

それにしても。1987って……参考にしていいのかどうかってくらいの古さですね。
なんか、この古い文献についてなんかいうの、ちょっとあとだしジャンケンみたいで、やだなぁ。
とおもってたのですが。

石田敏子『入門書き方の指導法』(アルク・2007)

というのが出てるんですよ。
これ、だいぶ最近の資料ですね。
この20年でどれだけ、文字の書き方が進化したのか、石田(1987)と比べてみることもできますね。
楽しみです。
ってわけで、石田(1987)と石田(2007)を見比べながらなんか言いますね。

で、まず筆順について


石田(1987)

第4節 非漢字系学習者の問題

筆順には、一定不変の法則はありませんが、各字ごとにほぼ決まった書き順が古来から定着しており、学校教育で教えるべき筆順は文部省『筆順指導の手引き』(1958)によって原則が示されています。
正しい筆順は字形の間違いを防ぐのみでなく、速く書ける、将来辞書を引くのに必要な画数の数え方を知る、崩して書かれた字の判読に役立つなどの利点もあるので、原則をしっかりと習得するまで、すなわち、少なくとも初級の前半を終えるところまではきちんと指導しなければなりません。(31P)


筆順は大切だよ、ってことですね。で、続きがこうです。

(略)
 めちゃくちゃな順序で平仮名や漢字を書く中級学習者をよく見掛けますが、その多くは筆順に関する指導も受けず、筆順の大切さを意識していません。(略)
 漢字は非漢字系の学習者にとっては、文字というより図形です。点を下から上にはねたり、横線を右から左へ引いたり口を右上端から一筆で書いたりするので、字形にも強く響きます。字源を示すことも筆順を覚えるのに役に立ちます。
 ただ、現行の筆順は右手で書くことを前提としているようです。欧米人には左利きが多く、この人たちは筆順に従うとむしろ書きづらくなります。このような場合には、原則を一応示し、形に響くような極端に逸脱した書き方は避けるように指導すればいいでしょう。

下線は私が引きました。

えーと、

横線を右から左へ引いたり
口を右上端から一筆で書いたり


これ、だめですか?
私もやりますけど。むしろ、こうやらないと書きにくいんですけど。なにを根拠にこれを「めちゃくちゃな順序」って言えちゃうんですか?むしろ、左手で字をかくときには合理的ですが。

右手書字者が、横線を右から左へ引いたり
口を右上端から一筆で書いたり


とか限定付きで書くならまだわかるけど。
で、「欧米人には左利きが多く」って、私はもう1987年には左手で字を書いてましたけど、「欧米か!」
いや、ほんと、冗談じゃなく。


ま、あ、いいです。欧米の左手利きのほうが、日本よりさきに右手利き矯正の矯正から解放されていたっていうのは、まあそうでしょう。
でも、1987年から20年たてば、さすがに日本だってだいぶマシになってるはず。
筆順に関する研究も、書道教育の分野で、ちゃんと蓄積されてきました。
さあ。20年後。日本語教育の筆順指導はどのように進化したのでしょうか。

石田(2007)PP.47-48

6.非漢字系学習者の問題
6.1筆順
筆順には、一定不変の法則はありませんが、各字ごとにほぼ決まった書き順が古来から定着しており、学校教育で教えるべき筆順は文部省『筆順指導の手引き』(1958)によって原則が示されています。パソコンの普及などで日本人でも文字を手書きする習慣が減りつつあることから、日本語教育における文字指導、特に筆順に関しては再検討が必要ではないかといわれています。正しい筆順は字形の間違いを防ぐのみでなく、速く書ける、将来辞書を引くのに必要な画数の数え方を知る、崩して書かれた字の判読に役立つなどの利点もあるので、原則をしっかりと習得するまで、すなわち、少なくとも初級の前半を終えるところまではきちんと指導しなければなりません。
(略)
 めちゃくちゃな順序で平仮名や漢字を書く中級学習者をよく見掛けますが、その多くは筆順に関する指導も受けず、筆順の大切さを意識していません。(略)
 漢字は非漢字系の学習者にとっては、文字というより図形です。点を下から上にはねたり、横線を右から左へ引いたり、口を右上端から一筆で書いたりするので、字形にも強く響きます。字源を示すことも筆順を覚えるのに役に立ちます。
 ただ、現行の筆順は右手で書くことを前提としているようです。欧米人には左利きも多く、この人たちは筆順に従うとむしろ書きづらくなります。このような場合には、原則を一応示し、形に響くような極端に逸脱した書き方は避けるように指導すればいいでしょう。


あ。あれ?
同じ文章じゃないー。
えっと、下線部が加筆された箇所です。


あ、あと校異がありました。

石田(1987) 欧米人には左利きが多く
石田(2007) 欧米人には左利きも多く

あとは同じですね。
はいー。
……えー。
えー。えー。

けっきょく、1987も2007も、
「筆順は大切。でも左手書字者は適当にやってれば?」
なかんじでしょうか。ついでに言っちゃうけど、
「あ、あと、左手書字者は適当にやってもいいけど、”正しい”書き順は知識として覚えておくこと。辞書ひくときにつかうから」
みたいな。

あとね、これ、ちょっと困ったなあとおもうのは

日本語教育のなかでも

毛筆=実用

ってなっちゃってるところ。

石田(1987)

書く場合には教科書体を書かせます。しかし、習字の心得がないせいか、筆の勢いによる些細な差も、外国人学習者が書くと、同じ字とは認めがたいほど標準的な形とは違ってしまいます。漢字テストの採点では、数人で採点しても正解と認めるかどうか決めかねてしまうこともあります。(35P)


石田(2007)
習字の心得がないせいか、筆の勢いによる些細な差も、外国人学習者が書くと、同じ字とは認めがたいほど標準的な形とは違ってしまいます。漢字テストの採点では、数人で採点しても正解と認めるかどうか決めかねてしまうこともあります。興味を持たせるためだけでなく、この意味でも、余裕があれば、書き方クラスの導入時または一部に習字を加えると効果的です。

習字って、たぶん毛筆書道のことだとおもわれるのですが。

やめてください。
ほんとうに。


posted by なかのまき at 23:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 書道教育
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