2010年07月04日

書写・書道の迷走

これどーですかね。
中山理香「障害者における書法学習に関する研究」

今日、さまざまな芸術の各分野において芸術療法が発達し、医療の現場をはじめとしてさかんに行われている


というでだしではじまります

自閉症の人に書道をやってもらった結果のまとめの研究らしいですが。
「しょどうやるとこんなにいいことがいっぱいありますよー」
っていいたい研究ってことで。



アンケート調査の結果によると、書道を続けていることによって、他動性の強かった人が椅子に座っていられるようになった、落ち着いていられるようになったなどということが明らかになった。また、文字の存在を理解できるようになった、コミュニケーション能力・社会性の向上などが個人差はあるものの見られた。


「多動性の強かった人が椅子にすわっていられるようになった」とか。
「療法」の意味をはきちがえてませんか?
こういう方向で「これが研究成果ですー」とかいわれると私はかなりはらがたつんですよね。

あと、


書道を学習する過程で、脳のあらゆる機関が活性化する。主に活性化する部分は前頭前野で思考・学習・意欲・情操などといった高次機能が集中している。この前頭前野を鍛えることは教育の現場、痴ほう症患者に有効だと考えられている。また、筆を用いこの所作活動および所持活動を行うことにより、体内のコルチゾン値が減少し、ストレスが軽減されることが明らかになっている。


これ、書道じゃなくてもいいですよね。ナントカ値が減少とか。
べつに書道でもいいけどね。書道特有の「いいこと」ではないですよね。

なんか、この文章にかんしては卒論のまとめらしいんでなんともいえないんですけど。


あと、もうひとつ怖いのをみつけました。

タイトルだけ。


鈴木慶子・川島隆太他『人間の高次脳機能をはぐくむ手書き活動に関する調査研究』
『文字を「書く」ことの活動に関する科学的・実証的研究』

もう、タイトルだけでどんだけ危険な研究か、興味しんしんです。
どうも、科研費の報告書にのってるらしくて。
科研の報告書か……なかなか手にはいんないんですよね。あれ。
さっさと論文にしてください。

というわけで、タイトルだけで判断します。

「手書きの文字をかくと脳からナンタラカンタラという物質がながれでて、脳にいい! だからみんな、手で字をかけ!」

って研究でしょ。たぶん。
ちがったらすみません



川島隆太氏って、あれですか。

筆跡学脳トレの人ですかね。

鈴木慶子氏は書道教育の人っぽいですね。


もうー。
あのね、べつに脳を元気にさせるのに「手書き」は有効かもしれません。でも、それって「手書きで字を書く」にかぎったはなしじゃないでしょ。ほかの動作でもいい可能性なんか、いくらでもあるでしょう。
(そもそも、脳が元気じゃなきゃいかんのか、ってもんだいもありますよ)


でね、それと「書写・書道の存続」はべつの話ですからね。
「パソコンあるから書写いらなくね?」
っていうといかけにこたえるときにね、
「手書きで字を書くと脳にいいから、書写はつづけるべき!」
とか、そういう答え方はだめですよ。
そういう、科学のおすみつきをもらってはだめです。いみがありません。

「パソコンあるから書写いらなくね?」は、文化の問題です。
科学で答えをだしてはいけません。
ちゃんと、土俵のなかでやりましょう。まっこうからかまえたほうがいいですよ。けっきょく、書写・書道の将来のためにもね。

でね。
さいあく、「ああ、うん、いらないね」っていう結論に達するかもしれない、という、それはね、ちゃんと想定しておいたほうがいいですよ。
まあ、書字教育がいらない、ってことにはならないとはおもうので、けっきょくもんだいなのは書道趣味を消せないのか、っていう問いになるとおもいますが。
あ、書道趣味って、毛筆に象徴されるなにかです。書字教育に毛筆は要らないよ。

「(書道趣味は)ぜったいぜったいいるんだもん!」っていう前提で、「結論ありき」で話をすすめるから、いまの書写・書道がだいぶ迷走してるんだとおもう。


「書字教育」(字をかけるようになるための教育)

「書写教育」(字をかけるようにという建前でいながら書道趣味をおしつけてるなにかのなまえ)
を、分離可能なものとして、検討したほうがいいですよ。
そのうえで、「やっぱり書字教育に書道趣味はひつようだった!」っていう結論になるならね。それはそれでいいんですけど。(まあ、ならないでしょーね。あ、そーか。だから結論ありきで迷走っていうか、暴走するしか残されたみちはないのか。どうしてこうなっちゃったんだろう。もっと、どうにかできなかったんだろうか。これから、どうにかできないんだろうか)

posted by なかのまき at 22:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 書道教育
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