2010年09月02日

文化を輸出

書道教育のひととおはなしをしたら、

服についても洗濯すれば落ちる墨汁があるらしいです。

たとえば

クレタケの「洗って落ちる書道液」

とか。
こういうのがあるそうです。
でもね、書道教育のひとがいうには、

これ、だけど墨の色の発色が悪いので、この人の教室ではつかっちゃいけないらしーです。
……さようでございますか。けっこうなことで。

いや、私は書道の素養がないので。
墨の色がどんだけ書道に大切なモノなのかよくわからんのです。
なのでなんも言えません。

それで、
いろいろ書きたいネタがあるのですが、

あべやすしさんからMLで情報をいただいたので。
これを。


asahi.com 定住に備え日本語研修終了 ミャンマー難民9月来日

【メラ難民キャンプ(タイ北西部ターク県)=藤谷健】迫害や紛争から逃れた難民を第三国が受け入れる「第三国定住」で、日本で新たな生活を始めるミャンマー(ビルマ)難民が27日、事前の研修を終えた。第1陣の5家族27人は少数民族のカレン族で、9月28日に来日する見通し。

 この日午前、日本語研修と研修修了式が日本の報道陣に公開された。日本語の授業では、未就学児を除く5歳から40代までの22人が自己紹介や病気の訴えなど、実用的な会話に取り組んでいた。また、筆でひらがなを練習していた。
講師の安達幸子さんによると、1日4時間、14日間の短期間の講習にもかかわらず、これまで母語の読み書きもできなかった女性3人を含む全員が、ひらがなの読み書きや簡単な会話ができるようになった。


「自己紹介や病気の訴えなど、実用的な会話に取り組んでいた。また、筆でひらがなを練習していた。」

いみわからん。



石田敏子『入門書き方の指導法』(アルク・2007)


習字の心得がないせいか、筆の勢いによる些細な差も、外国人学習者が書くと、同じ字とは認めがたいほど標準的な形とは違ってしまいます。漢字テストの採点では、数人で採点しても正解と認めるかどうか決めかねてしまうこともあります。興味を持たせるためだけでなく、この意味でも、余裕があれば、書き方クラスの導入時または一部に習字を加えると効果的です。


これをまじめに実践してる人がいるとは。

毛筆は硬筆の字かくときにぜんぜん関係ないものだってのは、書道の人はちゃんとわかってます。くわしくは

書道教育史・戦後


加瀬琴已(2002)「戦後の教育課程における毛筆の位置付け」『書写書道教育研究』16 pp.11-21

を紹介しました。でね。
記事に「1日4時間、14日間の短期間の講習にもかかわらず」ってかいてあるんですよ。
このかなりきつい時間制限のなかでなぜわざわざ、毛筆で字をかかなきゃいけないの?
鉛筆とノートでひらがなのかきとりのほうがよっぽどいいじゃないですか。
なぜ筆。ほんとうにいみがわからない。

ただ、いちどこの文章をテキストの段階で読んだとき、
やってることのよしあしは別として、
わざわざ紙と筆と下敷きと墨と墨汁と硯と水差しと……というさまざまな重たい書道道具をタイまで運ぶとは。
鉛筆とノートの何倍もの重さと、費用がかかるだろうにわざわざそれを用意する、そのエネルギーに。
書道フェチというものはすごいなあ。
と思って。それだけでもたいしたもんだ。と考えたのですが。

じっさいの
asahi.comのページの写真をみてみて。
あれ?

リンク先のページの写真、よくみるとおかしいんですよ。
みてみてください。
写真のメインは、3にんのこどもがならんでるところです。

机をつかわずに、地面に直接下敷きと半紙をしいて、筆でひらがなをかいてます。しんどい体勢だな。
右がわの赤いシャツきてるこどもは正座をしてます。
で、真ん中の白いシャツと左の黄色のシャツのこどもは、あぐらかいてます。

書写の教科書の「正しい姿勢」ではありえない格好でかいてます。
筆の持ち方も、中央の白いシャツのこどもはペンをもつように握ってます。左の黄色いシャツのこどもにいたっては、筆の軸を上からにぎりこんでますね。しかも、紙を手に持って宙にうかせて字をかいてます。すごい風格ですね。
そして書き終えた直後なのに筆の穂先が白いのはなんで。
あれ?墨は? 墨汁はどこに置いてるの? あれー?

うん。たぶん、下のリンク先にあるような、墨を使わなくていい半紙みたいなおもちゃをつかっているのかとおもわれます。

水でお習字・半紙

これでしょ。
服を墨でよごすわけにはいきませんものね。
それに書道用具はこの半紙と筆と下敷きだけもっていけばいいですもんね。
お手軽ですね。

ところでさ。
これ、なに?
なにがやりたいの?

書道の人はこの写真みて、どうおもいますか。

クレタケの「洗って落ちる書道液」を使うのもいうやがるような発想をするひとたちですよ。

この写真をみたら、怒り狂うんじゃないですかね。
「こんなの書道じゃない! なにをやってるんだよ!」
って。

筆でひらがなをかかせる、という。それだけだけど。
あまりにも書道への愛にかけてます。この写真のやりかた。
墨の色ひとつでガタガタいうような人々の大切なものをこんなにねじまげて……それでいったいなにをつたえたかったの?なにがしたいの?

たぶん、これはひらがなの練習でもなく、書道でもなく。
なんか「日本文化っぽいもの」を教えたかったのでしょう。

すごくひとりよがりで、いびつな、どこかのだれかが勝手におもいついた安易でお手軽な「日本文化っぽいもの」を。
「日本にくるならやっておきたまえ」っておしつけて。

こんなもの、研修を受けている人々にも、書道の愛好家にも、ひどい暴力じゃないですか。
なんなんだ。これ。
posted by なかのまき at 20:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 書道教育
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