2010年11月22日

はじめに私小説があった

今日はヨタばなしをします。

某所で、音楽と人格の結びつきみたいなはなしになったのですが。

あらすじを説明すると、
私は大学のとき、音楽系のサークルに半年だけ所属してたことがあるんですが。
ある日のミーティングで、
「トレーナーの先生に挨拶しないやつがいるが、音楽にたずさわるものが挨拶をできないとはけしからん」
みたいなことを4年生がいいはじめて、
「あ、ここいやだな。こんなこという人間を野放しにしておく組織にはいたくない」
っておもってやめたんです。

それで、書道だけじゃなく、音楽も人格にむすびつけられるときもある。ってことになって。
でもぎゃくに「芸術家は変人がおおい」みたいなのもあるよね。
って話になったのですが、それをふまえて。

そう、たまたま最近「来年から作文もやって」っていわれて、
参考文献になるかとおもって、
大塚英志(おおつか・えいじ)の『キャラクター小説の作り方』という本をよんだのですが。

私が読んだのは角川文庫版です。

そこの、「はじめに」で


人は何故、小説家になりたいのでしょうか。実はぼくにとって一番の疑問はそれです。(略)「小説家になる」ということは、どこかで「自分が自分であること」と不可分に結びついているような気がして、それがぼくには不思議です。(略)小説家というのは生まれつき小説家であるか、ある日、突然、天から小説家の人格が降りてきてとり憑くかでもしない限り人は小説家たり得ないことになります。けれどもこういう言い方を作家たちが好んでするのは「小説家」であることが本人たちの「私であること」と不可分に結びついているからのように思えます。だから小説家たちは小説を書くこと以上に自分のキャラクター作りに熱心です。「無頼派」とか「アウトロー」なんていうキャラクターの作家は昔から山ほどいますが、本人が言うほど破綻した生活を送っているわけでもありません。小説家になる運命云々も神宮球場の出来事(引用注:村上春樹のエピソード)も小説家であることが小説家自身にとっても「私」であることとやっかいにも結びついているからです。(pp.8-9)


とかいてあります。
「私」と小説そのもの、そして小説家であることが不可分な世界があると、大塚氏は指摘しています。
そして「私」の演出のために「無頼派」とか「アウトロー」をよそおう。

つまり、「その人の人格が作品に出る」というものの言い方は、初心者をまじめに練習させるときにもつかわれる。その場合は「まじめさ」「どりょく」「ねっしんさ」を演出せよと要求される。
そしてぎゃくに、すでに成功してしまった人間の、他を超越した才能をきわだたせるためにもつかわれる。そのばあいは、「無頼派」「アウトロー」がつかわれる。
どちらもおんなじなわけです。
作品と人格を結びつけるという点では。

作品や職業と「私」を不可分なものとしているその理由として、大塚氏はこう指摘します。


小説家になることが「私捜し」と密接に結びついてしまったのは、この国の「文学」が大なり小なり「私小説」という伝統の上に成り立っているからです。そして、小説家志望者たちが小説家にうまくなれないのは、「私探し」と「小説を書く」という行為をうまく区別できないからのように思えます。(p.9)


『キャラクター小説の作り方』という本は、徹底して文章をかくテクニックについて述べています。
小説家となるための心得、などという精神論にはしることをきつくいましめています。

そして、「私」と「小説をかくためのテクニック」を不可分なものにしているのは、私小説という伝統のせいだ、と言っています。
しかし、はたして「私さがし」と「テクニック」をわけられないのは、小説だけなのでしょうか。書道も音楽もスポーツにもテクニックと不可分の「私」がいる。
日本の私小説という伝統の上に、書道や音楽や部活動がなりたっている、というように言えるのではないでしょうか。

もちろん、大塚氏はそんなことは言ってません。

しかし、小説が「私探し」と不可分であるのが私小説という伝統に由来するのであれば、書道と「私探し」が不可分であるのも私小説の伝統に由来するといえるのではないでしょうか。

すべての元凶は、私小説である。


……ヨタばなしもいいとこだな。
ちょっと魅力的だけど。


(あ、大塚氏がヨタをとばしているといっているわけではなく、書道と私小説をむすびつける、私の言い方がヨタなんですよ)
posted by なかのまき at 00:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/41803739
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック