2011年03月09日

国語教育と筆跡学とニセ科学

今日は国語教育と筆跡学のかかわりについて書きます。

『教育科学国語教育』732号


漢字の基本指導―漢字練習の試み
という特集がありました。

河隅道子(2011)「漢字の基本指導―書写 一年生書写教材「びわの実」を通して」

生徒は基本の点画を守りながら「きれいな字」を書こうとする。それは「文字」を美しく書くだけでなく、自らの内面を筆に乗せて表現しようとする姿でもある。投げやりに書けば投げやりな自分が。精魂込めれば端正に。できあがった作品には、一生懸命なそれぞれの姿が表現されており、自らの心の有りようこそがそこに残されている。(p.46)


山田高広(2011)「漢字嫌い」をなくす指導原理

私は初任の頃から、次のように思ってきた。

字は、その人にとって、顔なのだ。

生徒はよく、書写などをさせると、「字が下手だから」という言い方をする。
私はにこっとしてこう言う。

上手、下手ってあんまり関係ないよ。
丁寧に書くか書かないかの方が大事だな。
丁寧に書いた字は、必ず相手にあなたのよさが伝わる。(p.93)


こういう、国語の先生のものいいが、
字面の形と人間の内面を結びつける思想が、
ニセ科学である筆跡学・筆跡診断と無関係に成立できるものでしょうか。

私は、国語教育の現場のことはわかりません。
「専門家でもないお前になにがわかる!」
ということはできます。

「おまえがこどものときにであった筆跡学よりの教師は、たまたまおかしい教師に出会っただけだ。
おまえの個人的な体験を根拠に国語教師のすべてが、筆跡学に傾向しているとおもわれるのは心外だ!」
という批判は、それはまとを外してはいません。
ただし、本当にそれは、「とある思想的に偏った国語教師個人の問題」に帰してしまってよいのでしょうか。
私は国語教育の現場のことはわかりません。
でもわからないなりに、判断できることはあります。

たとえばなしをします。
たとえば、「教育科学理科教育」という雑誌があったとします。で、「水にありがとうというと美しい結晶ができます」という論文が2本のっていたとしたら、それは、理科教育が危ない。って思います。

たくさんの理科教師のなかでただの一人も、「水にありがとう」を信じてしまった人がいたり、信じていないけど道徳に都合いいからと教室の中で垂れ流してしまうひとがいない、ということは難しいでしょう。
どうしたってハマる人はハマる。
それを「理科教育全体の問題」ととらえてしまえば、それは問題でしょう。

しかし、それと「教育科学理科教育」という雑誌に「水にありがとう」論文が2本のることとは、ちがう。それは「個人的におかしい教師のしわざ」ではすまされないわけで。
その雑誌をつくるにはたくさんの人の手がかかっている。その雑誌はたくさんの人に読まれる。
あきらかに理科教育からみておかしなことを真顔でいう論文が、どうどうと「教育科学理科教育」という雑誌にのってしまって、なんの批判もよせられないのであれば。
それは一人二人の特殊な人のせいにすることはできないでしょう。理科教育全体の問題です。もう一度書きますが、これはたとえ話です。事実に基づいた発言ではありません。

では、事実に基づいた発言にもどります。
すくなくとも、『教育科学国語教育』という雑誌で「自らの内面を筆に乗せて表現」とか「丁寧に書いた字は、必ず相手にあなたのよさが伝わる」とかあやしさ満開な記事をのせてしまい、それにたいして反論記事や訂正記事が一切だされない。
この2本の論文を掲載したのは『教育科学国語教育』という雑誌です。
しかも、「国語教育ビックリトンデモ教案大特集w」とかそういう特集なわけじゃないんですよ?
「ああ、いいこといってるなあ」みたいなかんじで読まれることを期待されている論文です。

これをもって、「国語教育は筆跡と人間の内面を結びつける発言に寛容である。」と判断します。

また、その字面と人間の中身を強引に結びつけることをためらわない考え方に、筆跡学や筆跡診断を助長するおそれを指摘します。

筆跡診断がいかなるものであるかについては、おもしろいものをみつけました。

日本筆跡診断士協会のサイトより以下のページを紹介します。

筆跡診断とは?―日本筆跡診断士協会

引用します。

筆跡特徴とは
(略)

海外での状況

西洋では長い研究の歴史があり、特にフランス・ドイツ・スイス・アメリカで盛んである。フランスでは19世紀末以来、筆跡診断士(グラフォログと称する)は国家資格に準ずる資格となって、医師・弁護士・会計士等と同等の権威を持っている。

(参考外部リンク)
http://en.wikipedia.org/wiki/Graphology
http://www.graphology.ws/grapholinks01.htm


で、ここのひとつめのリンク(英語版ウィキペディア)をクリックしてみてください。

Graphology-Wikipedia, The free encyclopedia

この記事ですが、一行目にこんなことが書いてあります。


Graphology is the pseudoscientific study and analysis of handwriting especially in relation to human psychology.

「筆跡学・筆跡診断はニセ科学(pseudoscience)だ」って書いてあるページに、リンク貼ってる日本筆跡診断士協会は、あるいみものすごく良心的ではありますね……

posted by なかのまき at 21:36| Comment(0) | TrackBack(0) | ニセ科学;筆跡学
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